熊手の飾り方|飾る場所と方角・壁への固定の仕方・いつまで飾るか
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酉の市で熊手を買ったものの、「うちには神棚がない。どこに、どちら向きに飾ればいいのだろう」と持ち帰ったまま置いていませんか。
実は、神社が案内している条件は「目線より高い場所」「清浄な場所」「南か東を向ける(難しければ北向きだけ避ける)」の3つだけです。神棚も床の間も必須ではありません。
この記事では、住まいに合わせた飾り方と壁への固定の仕方を整理し、情報が食い違いやすい方角について、神社の案内を出典つきで並べて確認します。
熊手を飾る場所の条件は3つ
神社本庁は熊手を「商売繁盛にまつわる縁起物」と紹介し、飾り方については「神棚や床の間など、清浄な場所に飾りましょう」と案内しています。設備そのものではなく、場所の状態を条件にしている点が大切なところです。
| 条件 | 目安 | 理由とされていること |
|---|---|---|
| 高さ | 立ったときの目線より上 | 見下ろす位置に置かない、という考えから |
| 清浄さ | ホコリと湿気がたまらない場所 | 清らかな場所に納めるという考えから |
| 向き | 南向きか東向き | 難しければ北向きだけ避ければよい、とされている |
神棚や床の間があるなら、そこが第一の候補になります。ない場合も、上の3つを満たせば棚の上でも玄関でも構わないとされています。
なお、お札そのものの飾り方については神棚がなくてもお札は飾れる|賃貸・マンションでの御札の飾り方でくわしく書いています。
熊手を飾る3つの方法と、壁への固定の仕方
熊手は小さなもので20cm前後、大きなものになると1mを超えます。お札やお守りと違って重さと奥行きがあり、置き方より留め方で悩む方が多い品です。住まいごとの向き不向きを整理しました。
| 方法 | 向いている住まい | 注意点 |
|---|---|---|
| 壁に掛ける | 掛けられる壁がある住まい | 賃貸は跡の残りにくい固定具を選ぶ |
| 棚や家具の上に立てかける | 背の高い棚がある住まい | 倒れ止めが要る。生活用品と混ざらないよう区切る |
| 玄関に飾る | 棚も床の間もない住まい | 下駄箱の上は高さが足りないことがある |
壁に掛ける
目線より高い位置を確実に取れる方法です。熊手には吊るための紐や輪が付いているものが多く、フックがあればそのまま掛けられます。
付いていない場合は、竹の骨組みの交わっているところに紐を回して吊り手をつくります。飾りの付いていない骨だけの部分を選ぶと、見た目を損ないません。
気をつけたいのは、熊手そのものに直接ピンや釘を刺さないことです。竹も木も繊維が縦に走っているため、金物を打つとその場では留まっても、乾燥と湿気を繰り返すうちに繊維に沿って裂けが広がっていきます。必ず紐やワイヤーを間にはさんで、荷重を面で受けるようにします。
棚や家具の上に立てかける
壁に穴を開ける必要がなく、賃貸でも原状回復の心配がありません。本棚やキャビネットの天板に、壁へもたせかけて置きます。
ただし熊手は飾りが前面に集まっていて重心が前にあるため、立てかけただけでは前に倒れてくることがあります。柄の下を壁側へ少し引き込むか、柄の後ろに本などの支えを置くと安定します。
もうひとつのポイントは、熊手の周りに何も置かない余白をつくることです。リモコンや充電器と並ぶと、生活用品の一部に見えてしまいます。小さな敷物か白い紙を一枚敷いて「ここから先は別の場所」と区切ると、それだけで佇まいが変わります。
玄関に飾る
棚も床の間もない住まいで多く選ばれている方法です。福を迎え入れる場所という考えから、玄関に飾る家は昔から多くあります。
気をつけたいのは高さです。下駄箱の上は座ったときの目線ほどしかないことが多く、条件を満たさない場合があります。その場合は下駄箱の上ではなく壁の上部に掛けるほうが条件に合います。
玄関は人の出入りが多く、ホコリも立ちやすい場所です。飾る前に一度拭き上げておくと、清浄さの条件も整います。
賃貸で壁を傷つけたくない場合
石膏ボードの壁なら、細いピンを斜めに複数本打って支えるタイプのフックが使えます。穴が針ほどの太さで済み、跡が目立ちにくいものです。
貼ってはがせるタイプのフックは手軽ですが、粘着力は温度と湿度で落ちます。玄関や窓際など寒暖差の大きい場所では、時間が経つと外れることがあります。重さのある熊手には、耐荷重に余裕のあるものを選んでください。

熊手を飾る方角に決まりはありますか?
ここがもっとも情報の食い違うところです。「東は仕事運、西は金運」と方角ごとに意味を割り振った解説を見かけることもあります。神社が出している案内をたどると、以下のように書かれています。
| 出典 | 方角についての記述 |
|---|---|
| 神社本庁 | 「神棚や床の間など、清浄な場所に飾りましょう」(方角の指定なし) |
| 浅草 鷲神社(酉の市) | 「なるべく高いところで北を背にして南向き或いは東向きがベスト」。適当な場所がなければ「北向きだけを避けていただければ宜しい」 |
| 今宮戎神社(十日戎) | 「福笹が南側または東側に向くように、且つ目線より高い所にお祀りを願います」 |
まとめると、関東の酉の市も関西の十日戎も、案内しているのは「南向きか東向き、目線より高く」で共通しています。
迷ったときには、次のように置くとよいでしょう。南か東に向けられるならそうする。間取りの都合で難しければ、北向きだけ避ければよい。授与元の寺社が別の案内を出している場合は、そちらを優先してください。
「熊手の正面」はどこを指すのか
方角の話でつまずきやすいのが、どこを正面と数えるかです。おかめや小判などの飾りが付いている面が正面にあたります。その面が南または東を向くように掛ける、という意味になります。
壁に掛ける場合、熊手の正面は壁と反対側を向きます。したがって南か東の壁ではなく、南または東を「向く」壁、つまり北側か西側の壁に掛けることになります。ここは取り違えやすいところです。
熊手はいつから、いつまで飾るのか
熊手は11月の酉の市で授かるものですが、正月飾りの案内には「暮れの28日に飾る」と書かれていることがあり、買ってから1か月以上しまっておくべきなのかと迷う方がいます。
酉の市の発祥のひとつとされる浅草の鷲神社は、この点にはっきり答えています。新しく授与されたお札や熊手は暮れの28日に神棚などへ祀るとしたうえで、「熊手などを納めて新しく買い換える場合はすぐに飾ってもかまいません。」と続けています。
- 前年の熊手を納めて買い替えた場合: 買ったその日に飾って構わないとされています
- はじめて熊手を求めた場合: 暮れの28日を目安に飾る、という案内に沿う形になります。ただし空いた場所に飾ってはいけないという趣旨ではないため、迷えば授与元に尋ねるのが確実です
飾る期間は1年間とされています。翌年の酉の市で新しいものを受け、古いものを納める。熊手は、毎年めぐってくるものだということです。
2026年(令和8年)の酉の市と十日戎
| 行事 | 2026年の日付 |
|---|---|
| 一の酉 | 11月7日(土) |
| 二の酉 | 11月19日(木) |
| 三の酉 | なし(次の酉の日は12月) |
| 十日戎(*1) | 1月9日〜11日 |
*1: 十日戎=関西を中心に、えびす様をまつる神社で1月に行われる祭礼。熊手や福笹が授与されます。
※開催日・授与の時間は寺社によって異なります。お出かけ前に授与元の案内をご確認ください。
毎年少しずつ大きくしていくもの?
「前の年より少し大きな熊手にしていく」という言い伝えは各地で聞かれます。ただし神社本庁や各社の案内に、大きさについての決まりは書かれていません。置き場所に収まらない大きさにしてしまうと、条件のほうを満たせなくなります。飾る場所に合う大きさを基準にして差し支えありません。
役目を終えた熊手はどうするか
鷲神社は「一年間御守護頂いた、古札・熊手等は、お炊き上げ料を添えてお求め頂いた神社仏閣へお納め下さい」と案内しています。翌年の酉の市に持参して納め、その場で新しいものを求めるのがもっとも自然な流れです。
遠方で行けない場合や、お札と一緒にまとめて手放したい場合の手順は、古いお札の処分方法|御札の返納時期と新しいお札を迎えるまでで4つの方法に整理しています。熊手も同じ扱いで納められます。
工房から:「清浄な場所」は、設備ではなく手入れの話です
熊手の飾り方を調べていると「清浄な場所へ」という言葉に行き当たり、神棚のない自分の家では条件を満たせないのではと感じる方がいます。
けれど、神社のお札の箱を日々つくっている立場から見ると、これは実用的な理由が大きいように思えます。熊手は竹や木の骨組みに、和紙・布・木の飾りが付いた品です。湿気とホコリに弱く、色も褪せます。台所の油煙が届く場所、エアコンの風が直接当たる場所、窓辺の直射日光に置けば、1年もたずに飾りが反ったり色が抜けたりします。「清らかな場所に」という言い伝えは、そのまま「傷みにくい場所に」と重なります。
金物を直接打たない、という先ほどの話も同じところから来ています。木も竹も繊維が縦に走っていて、そこに釘やピンを打てば繊維は割かれます。工房で杉を扱うときも、木の性質に逆らわない留め方を先に考えます。1年間そのままの姿でいてほしいものほど、この差が出ます。
無塗装の杉も湿気を吸って吐きますから、置き場所によって1年後の姿がはっきり変わります。だから工房では、飾る道具をつくるときにいつも同じことを考えます。立派な設備をそろえることではなく、手入れの続く場所を一か所決められるかどうかが、その品が1年後にどう見えるかを決めるのだ、ということです。
熊手と一緒に授かったお札の居場所も、決めておく
酉の市や十日戎で手にするのは、熊手だけとは限りません。神社が授与する熊手御守は「かっこめ」「はっこめ」と呼ばれ、熊手にお札と稲穂を飾った形をしています。熊手商から買う縁起熊手とは別のもので、両方を求める方も多くいます。年が明ければ、初詣のお札やお守りも加わります。
ばらばらに置くと、熊手は壁、お札は引き出し、お守りは鞄の中、と散っていきます。散ってしまうと、1年後に納めるときも探すところから始まります。
先にお札とお守りの居場所を決めてしまうと、熊手を掛ける位置も自然に決まります。その一角が目線より高く、手入れの続く場所であれば、条件は満たせています。
お札立ての素材ごとの違いや選び方は、お札立て(御札立て)のおしゃれな選び方|木製・陶器・金属を比較にまとめています。部屋別の考え方はお守りの置き場所はどこがいい?玄関・寝室・リビングの選び方をご覧ください。
神棚を置かない暮らしに、小さな祈りの場所を。
お札立て「inori」 国産杉・無塗装 127×100×48mm
- 棚や家具の上にそのまま置けます。壁に穴を開ける必要はありません
- お札とお守りを立てておく道具です。熊手そのものを掛けるものではありませんが、この一角が決まると熊手の位置も決めやすくなります
- 無垢の国産杉・無塗装。茨城県伝統工芸品指定の工房でお作りしています

熊手の飾り方について、よくある質問
熊手はビニール袋から出して飾るのですか?
出して飾って構わないとされています。袋はホコリ除けとして掛けたまま飾る方もいますが、掛けたままにすると中に湿気がこもることがあります。飾る場所のホコリが気になる場合は、袋のままにするよりときどき乾いた筆や刷毛で払うほうが傷みにくくなります。
マンションで、高い位置に掛けられる壁がありません。
棚や家具の上に立てかける方法で構いません。目線より高い天板であれば条件を満たします。倒れやすいので、柄の後ろに支えを置いてください。壁に掛けたい場合は、細いピンで留めるタイプのフックが石膏ボードの壁に使えます。
熊手と破魔矢、お札を一緒に飾ってもいいですか?
一緒に飾って構わないとされています。「神様同士がけんかする」といった心配は無用とされています。並べる場合は、お札を後ろか中心に置くとまとまります。破魔矢の飾り方は破魔矢の飾り方|神棚がない家の置き場所と向き・いつまで飾るかにまとめています。
去年の熊手と2つ並べて飾ってもいいですか?
1年を目安に新しいものへ替えるとされているため、古いほうは寺社へお納めするのが基本です。返納の手順は古いお札の処分方法|御札の返納時期と新しいお札を迎えるまでにまとめています。
熊手が落ちてしまいました。縁起が悪いのでしょうか。
そのように案内している神社の記述は見当たりません。落ちた原因は多くの場合、固定具の耐荷重不足か、粘着力の低下です。飾りに傷みがなければ拭いてから掛け直し、固定の仕方を見直せば差し支えありません。気になる場合は授与元に相談してください。
熊手にはどんな意味があるのですか?
神社本庁は熊手について、福をかき込むようにとの願いが込められた縁起物と説明しています。落ち葉をかき集める農具の熊手が、福をかき集める道具に見立てられたものです。酉の市は各地の鷲神社などで毎年11月の酉の日に行われ、商売繁盛・開運招福を願う祭りとして続いてきました。
まとめ
- 熊手を飾る条件は「目線より高い」「清浄な場所」「南向きか東向き」の3つ。神棚や床の間は必須ではないとされている
- 方角は、神社の案内では「南か東。難しければ北向きだけ避ける」で共通している。方角ごとに得られるものが変わるという整理は、神社の案内には見当たらない
- 飾りの付いた面が正面。壁に掛けるなら、北側か西側の壁に掛けると正面が南か東を向く
- 熊手そのものに直接ピンや釘を刺さない。紐やワイヤーを間にはさんで荷重を面で受けさせる
- 買い替えの場合は買ったその日に飾って構わないとされている。飾る期間は1年間
- 役目を終えたら、お焚き上げ料を添えて授かった寺社へお納めする
掛ける場所と留め方が決まっていれば、酉の市から帰ったその日に飾れます。今年の一枚を、無理のない形で迎えてみてください。
著者: orisige
茨城県稲敷郡河内町。国産杉の折箱を半世紀以上制作。茨城県伝統工芸品指定第67号。
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参考
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。作法やしきたりには地域・寺社による違いがあります。授与元の案内がある場合はそちらを優先してください。
※酉の市・十日戎の日程は年により変わります。最新の日程は各寺社の公式案内をご確認ください。
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