家具をそろえたあと、小物の素材として「杉」が気になっている方へ。杉の特徴は、軽くてやわらかいこと、木目がまっすぐ通っていること、特有の香りがあること、そして使ううちに色が変わっていくことです。その反面、傷やへこみがつきやすく、水にも強くありません。この記事では、杉のメリットとデメリット、ヒノキとの違いをご説明します。

杉の特徴【早見表】
| 項目 | 杉の性質 | 暮らしの道具で表れること |
|---|---|---|
| 重さ・硬さ | 気乾密度の平均 0.38g/cm³。国産の主な木材のなかでも軽くやわらかい | 片手で扱いやすい。爪や角が当たると跡が残る |
| 木目 | まっすぐに通り、年輪がくっきり見える | 木目がそのまま表情になる |
| 色 | 外側(辺材)は白く、中心(心材)は淡い紅色から赤褐色。境目がはっきりしている | 1枚の板に白と赤が並ぶことがある |
| 香り | 特有の香りがある | 塗装をしていなければ、木の香りがそのまま立つ |
| 加工 | 乾燥が速く、刃物で加工しやすい。木目に沿って割れやすい | 薄い板にして箱や桶をつくりやすい |
| 水 | 水に強い木ではない | 濡れたまま置くとシミが残る |
出典: 気乾密度は農林水産省『aff』2023年9月号(森林総合研究所監修)、木目・色・加工・用途は日本大百科全書・世界大百科事典(コトバンク)。詳しくは記事末の参考欄をご覧ください。
杉のメリット|暮らしの道具として
軽くて扱いやすい
農林水産省の広報誌(森林総合研究所監修)によると、杉の気乾密度は平均 0.38g/cm³ です。ヒノキは 0.44、ナラは 0.68、ケヤキは 0.69 ですから、同じ大きさなら杉がいちばん軽くなります。毎日動かす箱や、台所で出し入れする道具では、この軽さがそのまま使いやすさになります。
香りがある
杉には特有の香りがあります。百科事典には、心材の成分が酒に木の香りを移すため、酒樽に欠かせない材だと書かれています。塗装で表面を覆っていない杉なら、この香りを身近に感じられます。どのくらい続くか、どう変わっていくかは、別の記事で詳しくまとめる予定です。
明るい木肌と、まっすぐな木目
杉の木目はまっすぐに通り、年輪がくっきり見えます。白い辺材の明るさは、濃い色の家具のそばに置くと部屋に軽さを足します。淡い色の床や家具とは、同じトーンでなじみます。
熱を伝えにくい
林野庁の森林・林業白書は、木材が他の建築資材に比べて熱を伝えにくいことを特徴に挙げています。これは杉に限らず木材全般の性質ですが、手に触れる道具では、金属やガラスとの違いとして感じられるところです。
昔から暮らしの道具に使われてきた
加工しやすく、まっすぐな材がとりやすいことから、杉は建築だけでなく、箱・桶・樽・下駄・割りばし・経木など、生活の道具に幅広く使われてきました。茨城県の鹿島神宮の神木も杉です。杉は、毎日の暮らしにも、祝いの席にも使われてきた、身近な木でした。

↑杉でつくられる暮らしの道具としては、曲げわっぱが有名です。
杉のデメリット|やわらかさと水への弱さ
傷やへこみがつきやすい
軽いことの裏返しで、杉はやわらかい木です。硬いものをぶつけたり、爪を立てたりすると跡が残ります。オークやウォルナットの家具に慣れていると、最初は頼りなく感じるかもしれません。跡を「傷んだ」と感じるか、「使ってきた跡」と感じるかで、向き不向きが分かれます。
水に強くない
杉は水に強い木ではありません。無塗装の杉は、濡れたまま置くとシミが残ります。水まわりで使う道具や、洗いたい道具には、表面を塗装で覆ったものや、別の素材が向いています。
木目に沿って割れやすい
杉は木目に沿ってまっすぐ割れやすい性質があります。加工しやすさと表裏の関係で、薄い板では特に、強い力が一方向にかかると割れることがあります。
私たちは、杉のこうした弱さを前提にものづくりをしています。シミの削り直しや、破損したときの修理もご相談いただけます(内容によって対応が変わりますので、まずはお問い合わせください)。
やわらかさも色の変化も含めて、杉の道具を手元で育ててみたい方へ。折重の杉の道具は「杉と暮らす/育つ」にまとめています。
杉とヒノキの違いは?
杉とよく比べられるのがヒノキです。どちらも日本の代表的な針葉樹ですが、木材としては次のような違いがあります。
| 項目 | 杉(スギ) | ヒノキ |
|---|---|---|
| 気乾密度(平均) | 0.38g/cm³ | 0.44g/cm³ |
| 木目・木肌 | 年輪がくっきり目立つ | 肌目が緻密で、色つやがよい |
| 主な用途 | 床柱・天井板などの内装、箱・桶・樽・下駄 | 家具・仏壇・漆器の木地・指物・風呂桶 |
| 心材と辺材の色 | 境目がはっきりしている(辺材は白、心材は淡紅色から赤褐色) | 差が少ない(辺材は黄白色、心材は淡黄褐色から淡紅色) |
| 葉の形(木の見分け方) | 針のように先がとがり、枝をらせん状に囲む | うろこのような小さな葉(鱗片状)が茎に密着する |
出典: 気乾密度・木目・用途は農林水産省『aff』2023年9月号(森林総合研究所監修)、色と葉の形は百科事典(コトバンク「スギ」「ヒノキ」)。
数値で見ると、ヒノキは杉より少し重く硬い木です。緻密で光沢のある木肌を生かして、家具や漆器の木地、風呂桶などに使われてきました。杉は、軽さと加工のしやすさ、くっきりした木目を生かして、暮らしの道具や内装に広く使われてきた木です。
赤身と白太|同じ杉でも色が違う理由
杉の丸太を輪切りにすると、中心の赤みを帯びた部分と、外側の白い部分に分かれています。中心側を心材(赤身)、外側を辺材(白太)と呼び、杉はこの境目がはっきりしているのが特徴です。一方、ヒノキは心材と辺材の色の差が少ない木です。赤と白の対比がはっきり出ることが、杉の表情の特徴です。部品ごとに色がばらばらだと、ハコ全体がちぐはぐに見えるため、私たちは各部品の色がそろうよう入念に選んでいます。ただ、1枚の板の中に境目が表れることはあり、それも杉の表情として生かしています。

↑このハコのふたは、赤身と白太の境目が表れています。
杉は使ううちに色が変わる
無塗装の杉は、光や空気に触れ、手で触れられるうちに、明るい白木の色から少しずつ落ち着いた色へ変わっていきます。私たちは、この変化を「育てる」楽しみとしてお伝えしています。
色の変わり方や、変化を楽しむための置き場所は、別の記事で詳しくまとめる予定です。
折重から:杉でつくられる折箱
折重は茨城県河内町で、茨城県伝統工芸品に指定されている「杉折箱」をつくっています。折箱は、もともと人々が食事で使う食品の容器でした。特に杉でつくられる折箱は、庶民のハレの舞台で用いられてきました。海老や鯛などのご馳走を入れ、結婚式や七五三の引き出物として持ち帰るためのハコだったのです。いまは、その技術で生活の道具や雑貨もつくり、神社のお札の箱も日々手がけています。
杉は、豪華なお城の中よりも、城下町や農村の暮らしの中で使われてきた木です。杉は軽くて扱いやすく、国内で手に入りやすい木でした。だからこそ、折箱をはじめさまざまな場面で使用されてきたのです。折重が「庶民のハコ」を掲げているのは、かつて誰もが何気なく使っていた杉の道具を、いまの暮らしにもう一度取り入れてほしいと考えているからです。
無塗装の杉の道具とのつき合い方
- 汚れたら、乾いた布で拭く
- 拭いても落ちないときは、固く絞った布で拭き、すぐに水気を取る
- 濡れたまま置かない。水に浸けたり、洗ったりしない
- 水がかからない、風通しのよい場所に置く
私たちは、板を水溶性の糊で組み立てています。そのため、折重のカトラリーケースやスタンドは水洗いができません。木の道具が洗えるかどうかは、木の種類だけでなく、表面の仕上げと組み立て方で決まります。詳しくは木製カトラリーケースの選び方|杉・チーク・竹の違い/水洗いできるかどうかでご説明しています。
家具に合わせてどの木を選ぶか迷っている方は、木製ティッシュケースの選び方|杉・オーク・ウォルナットの違いと、家具に合わせる樹種の決め方で、樹種ごとの硬さと色を比べています。
杉の特徴について、よくある質問
杉はやわらかいので、すぐ傷だらけになりませんか?
硬いものを当てたり、爪を立てたりすると跡が残ります。跡やシミが気になったときは、削り直しや修理のご相談をお受けしています。
杉とヒノキは、どちらが道具に向いていますか?
私見ですが、軽さと、くっきりした木目を求めるなら杉、緻密な木肌と光沢を求めるならヒノキ、といえます。気乾密度は杉が平均 0.38、ヒノキが 0.44 で、ヒノキのほうが少し硬い木です。
無垢の杉と、集成材や合板の杉は違いますか?
無垢材は、1本の木から切り出した板をそのまま使ったものです。集成材や合板は、小さな板や薄い板を接着剤で貼り合わせてつくります。折重の製品は、無垢の国産杉を使っています。
折重の杉の道具
折重の道具は、無垢の国産杉を塗装せずに仕上げています。軽さも、やわらかさも、香りも、色の変化も、杉の特徴をそのまま手元に置くためです。
- 杉のティッシュボックス:毎日目に入る箱を、素材でそろえたい方に
- 杉のカトラリーケース:食卓のそばに、杉の明るさを置きたい方に
- 杉の小箱:小さなものをしまう、杉の箱をひとつ試したい方に
ほかの道具は「杉と暮らす/育つ」でご覧いただけます。
まとめ
- 杉の特徴は、軽くてやわらかい(気乾密度 平均0.38)、木目がまっすぐ、特有の香りがある、使ううちに色が変わること
- デメリットは、傷やへこみがつきやすく、水に強くなく、木目に沿って割れやすいこと
- ヒノキ(平均0.44)は杉より少し硬く、緻密な木肌と光沢が特徴
- 杉は、箱・桶・樽・下駄など、暮らしの道具に使われてきた木
- 無塗装の杉は、乾いた布で拭き、濡れたまま置かない
参考
農林水産省『aff』2023年9月号「日本の木材の種類と密度」(森林総合研究所監修)
コトバンク「スギ」(日本大百科全書・世界大百科事典ほか)
コトバンク「ヒノキ」(世界大百科事典・日本大百科全書ほか)
林野庁「平成30年度 森林・林業白書」第4章第3節
orisige note「庶民のハコ:日本人と杉の物語」
※気乾密度は複数の個体を測った平均値で、同じ杉でも産地や部位によって差があります。